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FIVE FINGER DEATH PUNCH

 最初にこのバンド名を目にしたとき、いかにもいかつそうだなという印象のみならず、どことなく愛嬌みたいなものを感じてしまった記憶がある。FIVE FINGER DEATH PUNCHを5FDPと略したりするとえらくカッコいいし、それを“五指死拳”なんて漢字に置き換えればクールさはさらに増幅される。しかしデビュー・アルバムのジャケットに描かれている髑髏はアメコミ調でちょっと可愛かったりもするし、このバンド名にしても解釈する側のセンスによっては“必殺グーパンチ”なんて訳されることにもなり兼ねない。つまり、どことなく愛嬌を感じてしまったのは僕がそういう駄目なセンス(!?)の持ち主だからなのだが。

 前述のデビュー・アルバム、『THE WAY OF THE FIST』の日本盤リリースが実現したのは今年に入ってからだが、実はこの作品、アメリカで最初に発売されたのは2007年のことだし、バンドはその後、ずっとツアーに次ぐツアーを重ねてきている。改めてその音楽性について詳しく説明する必要もないだろうけども、このアルバムに詰め込まれている音を僕なりに形容するなら「今日的でありながら瞬間風速的なトレンドとは無関係な豪腕メタル」ということになる。言い換えれば「最新型サウンド・フォルムを発明しているわけじゃないけども、古臭さとも無縁」ということでもある。

 実際、すごく正統派で王道的だと思うのだけども、必要以上に伝統を重んじる人たちからは、もしかしたらバンドのたたずまいとデス・ヴォイスの存在だけで邪道の烙印を押されてしまうところがあるのかも。で、敢えて言ってしまえば、僕はこのバンドのそういうところが好きなのだ。伝統美と様式を重んじたメタルのなかにも大好物はあるけども、たとえばPANTERAやSLIPKNOTが邪道視されながら自分たちの時代なりの王道を体現してきたのに通ずるものを感じてしまうのだ。さらに遡ればMETALLICAだって最初はそう見られていたし、革命的なバンドは大概の場合そうだったはずなのだ。

 それに、実はこの豪腕バンド、凶暴なばかりじゃなく、適度な叙情性やある種のキャッチーさ、意外なくらいノーマルな側面も持ち合わせている。歌ひとつをとってみても、確かにデス・ヴォイスでがなる曲もあるけども、弾き語りができそうな曲だってあるし、フィリップ・アンセルモやコリィ・テイラーがそうだったのと同じように「こいつ、実はすごく歌、上手いんじゃないの?」と思わせるところがある。こんなことを言うとさらに混乱を招くかもしれないが、メタルとして正統的であるのみならず、ちゃんとグランジ/オルタナティヴを通過してきた世代ならではのものとして成立しているという手触りもある。

 とはいえ、とりあえず現段階で、5FDPが次代を担うとか、救世主的存在になるはずだとか、そういった大それたことを言うつもりはない。というか、言いたくない。今のところ僕のなかで5FDPがもたらしてくれた喜びというのは、「近所に激辛カレーの名店を見つけて通っているうちに、その辛さのなかに複雑な繊細さを発見して感心させられた」とか、「頑固おやじが営んでいるお気に入りの呑み屋が満員だったので、仕方なく若造のやっている新しい店に入ってみたら大当たりで、よくよく聞いてみるとそいつが頑固おやじの息子だった」とか、そんなのに近い。なんだか書いているうちに自分でもよくわからなくなってきたが、とにかく今回のサマーソニックでのライヴの内容如何によっては5FDPがこれまで以上に重要バンドとして注目を集めることも考えられる。見逃せないものの多すぎる今回のサマソニだが、やっぱり彼らのステージも必見だ!

(増田 勇一)