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NINE INCH NAILS

ヘッドライナーではないNINE INCH NAILS(以下NIN)を観ることができる。これはかなり画期的なことだ。べつに皮肉を言うつもりもないし、彼らの直後にステージに登場することになるMY CHEMICAL ROMANCEに対してネガティヴな感情を抱いているわけでもない。たとえて言うなら、チャンピオンが敢えて王座を返上したうえで王者決定リーグに臨むような感じということになるだろうか? それともこれは、幕引きを決意した者がみずから選んだ“相応しいポジション”ということなのだろうか?

NINは現在、数多くのフェス出演を含むヨーロッパ・ツアーを行なっている。それ以前にはJANE’S ADDICTION、STREET SWEEPER SOCIAL CLUBを伴いながらの『NINJA TOUR』(言うまでもなくNINJA=NIN+JA)で全米各地を巡演してきた。チケットはソールドアウトの連続のようだし、盟友ロビン・フィンク(g)等とともに繰り広げられているライヴ自体の評判もすこぶる良好。そこに不安材料やマイナス要素は何ひとつ見当たらない。が、この活況をうらめしく感じてしまうのは、去る2月、トレント・レズナーが「今年のワールド・ツアー終了をもってNINとしての活動を停止すること」を宣言しているからだ。

どうしても活動を停止せざるを得ない事情というのは、おそらく、存在しない。単純に言えばトレント自身が「停止させたい」からでしかないのだろう。しかも彼自身が音楽活動をやめてしまうわけではない(はずだ)し、よくある解散劇の類いとも少しばかり匂いが違う気がする。近年もずっとそうだったように、これからもトレントは時代に即した方法論をもって優良な作品を提供してくれるはずだ(と信じたい)し、ここで歩みを止めてしまうからといって、それによってこれまで彼が実践してきた革命的音楽活動の意味が損なわれてしまうようなことは、あってはならない。いや、でも、そんな局面だからこそヘッドライナーとしてのNINを観たかったようにも思うし、逆に、こうして何かを問うようなカタチでステージに立ってこそNINなのだという気もする。

私事で恐縮だが、僕は今でも1991年2月に初めて観たNINのライヴが忘れられない。場所はロサンゼルス。彼らはJANE’S ADDICTIONの前座だった。ずっとストロボが点滅していて、ステージ上で何が行なわれているのかもほとんど肉眼で確認することができなかったが、それまでに味わったことのない衝撃に打ちのめされた記憶がある。ちょっと大袈裟に言えば、その夜の経験がある種のトラウマになっているのだ。蛇足ながら、同じ頃にNINのライヴを観て触発され、彼らに自身の欧州ツアーへの同行を要請したのがアクセル・ローズだった。

そうした余談はともかく、NINがまもなく終末を迎えようとしていること、トレントが重要な節目を迎えつつあることは、もはや誰にも否定できないし、それを阻止することも不可能に近い。しかしそこで彼らが披露してくれるのは、“最後の花火”のような寂しさとは無縁の、ふたたび僕に強烈なトラウマをもたらすようなライヴであるはずなのだ。だから無邪気に「楽しみだ!」と言い切ることには、少しばかり無理がある。なにしろそれ以前の記憶を消去し、それ以降に触れたものの印象を“無”にしてしまい兼ねないような鮮烈な何かを、きっとその夜に体験することになるのだから。

(増田 勇一)