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THE FLAMING LIPS

 風船や紙吹雪が宙を舞い、着ぐるみを身につけたメンバーやら何やらが登場し、そしていつのまにか最後は楽しかった記憶で笑顔が残る--そんなライヴでもはやおなじみの、フレイミング・リップス。デビュー当時から90年代にかけての、スキゾで想像の斜め上ばかりをゆくノイジーなアメリカン・オルタナの音作りにももちろんニヤニヤしながら魅せられていたけれど、今の、とにかく陽性のヴァイブを放ちつつ、その向こう側にある現実的かつ実験大好きの性質もちゃんと見え隠れさせる上手さは、なんというか最高だ。
 そういう意味で、フレイミング・リップスはファンをがっかりさせない加齢方法をよく分かっているバンドだと思う。だって嫌じゃない? その鋭さにかつて心酔したバンドが、いつの間にかヌルさとズレが「当たり前」になるさまを目の当たりにして、私の青春を返してくれと自己嫌悪に陥るなんて。年をとるのが悪いんじゃない、当たり前にヌルくなっていける価値観の鈍さに、がっかりするだけなんだけれど。ゆえに今でも変わらぬリップスの想像力を目の当たりにするたびに、ホント凄いわ、本気でアーティストだわと、研ぎ澄まされたがゆえにその本体ではなく、反射する光の華麗な美が印象に強く残る、鋭いナイフを思い出すのです。
 ちなみにリップスは、サマーソニックと非常に縁が深い。第一回目のサマーソニックにも出演し、今回で4度目の登場となる。今度はステージで何をしてくれるんだろう、という期待もありつつ、昨年冬に日本盤サントラ&DVDが出た短編映画『クリスマス・オン・マーズ』の曲もぜひ聴いてみたいなと思う。ウェイン・コリン(Vo&G)が監督し、本人はもちろんメンバーやスタッフが総動員したこの映画、まだ未見の方は今すぐ、抱腹絶倒で腹がよじれるのにどうしてこんなにホロリなの、という素敵な後味を味わっておいてほしい。これまでの20年を超えるリップスの音楽と歩みの基となっている、彼らの価値観--つまり、わたしたちファンが離脱せず愛し続けた理由が、きっと若き音楽好きの方々にもきっと伝わる、名盤だ。
 06年のサマソニ登場時には、あまりに会場が幸福になりすぎて、見ず知らずの方たちがそれぞれ手をとり(もちろん私も参加させてもらいました)"ヤー・ヤー・ヤーの歌(君にあるパワー)"が大合唱となったことも、記憶に新しい。余談だが、ブリティッシュ・シー・パワーのあの奇天烈なステージ・アクションも、インスパイア源はデビュー当時に前座として同じステージに立たせてもらっていたリップスのライヴ。彼らのライヴがいかに特別であるか、まだ体験したことのない人はこの機会に、ぜひ。ぜひぜひ。

(妹沢 奈美)